ウェブ・アクセシビリティ向上の要件

渡辺隆行 (nabe @ lab.twcu.ac.jp)

東京女子大学現代文化学部コミュニケーション学科

2005年10月27日 Internet Conference 2005
「表示切替」クリック(アクセスキー D)で1頁表示になります
[配布資料用メモ]
この資料の公開URL:
http:/www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/data/200510IC/
この資料の著作権:
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この資料の作成ツール:
S5: A Simple Standards-Based Slide Show System

概要

  1. ウェブ・アクセシビリティ向上の取り組み:WCAG 1.0やJIS X 8341-3などのガイドライン中心
  2. ガイドラインやチェックツールに頼るとユーザの視点から乖離しがちという欠点がある.
  3. 今後のウェブ・アクセシビリティ向上に必要なポイントを探るため,
    1. ウェブ・アクセシビリティに関する問題点を広く考察し,
    2. 重要ポイントをまとめた.

"The power of the Web is in its universality. Access by everyone regardless of disability is an essential aspect." -- Tim Berners-Lee, W3C Director and inventor of the World Wide Web

1. はじめに:ウェブの重要性と利点

  1. ウェブの普及:標準IF,e-Japan(公共分野のウェブ利用が増える)
  2. ウェブの利点:
    • 環境非依存:データが表示される環境を指定できない
    • 構造(XHTML)と表示(CSS)を分離できる (例:S5)
    • 電子データ:音声表示,点字表示,拡大表示などが可能
    • ウェブの標準技術がアクセシブル
    • W3Cは1999年にWCAG 1.0を発表:世界中に普及
    • 2004年6月に日本でもJIS X 8341-3発行

3. ウェブのアクセシビリティ・ガイドライン

4.1 ガイドラインの成果

4.2 ガイドラインの限界

ガイドラインに頼るとユーザ中心の発想が欠ける

5. ウェブの問題

5.1 根本的な問題

(1) 画面表示前提のウェブを音声表示する難しさ:
  • 画面:2次元カラー画面にレイアウト,GUI利用
  • 音声:1次元1方向表示なのでブラウジングが困難,AUI未発達
(2) 多様なウェブの利用者への配慮が困難:
  • 全盲利用者には文字
  • 学習障害者にはイラスト
(3) ウェブの自由さとの拮抗:
HTMLブラウザは仕様に寛容,object要素で自由に拡張
(4) 作者の目的にアクセシビリティは含まれない:

5.2 技術の問題

(5) ウェブ技術仕様のアクセシビリティ配慮不足:
W3C技術はWAIでチェック,PDFやFlashは508条対応,でも未だ不足
(6) 技術の標準化不足:
(X)HTML+CSS2の仕様に準拠できていないUA
(7) ユーザ・エージェントの機能不足:
音声スタイルシート未対応など,必要な機能がない
(8) OSの機能不足:
音声化ソフトはIEの機能に依存
(9) ツールの活用不足:

5.3 認識不足

(10) ウェブというメディアの特性の理解不足:
ウェブはポスターではない,複雑な構造,情報の保守が大事
(11) アクセシビリティ問題の認識不足:
障害者がウェブを利用していることを知らない,問題点を知らない
(12) よい教育素材の不足:
一般向けのわかりやすい教材が必要,プロセスで押さえる観点が大事
(13) ウェブのアクセシビリティ問題の研究不足:
技術から人間,社会まで複数の階層が関わる.ガイドライン選定の根拠?
(14) ユーザビリティとアクセシビリティが分離しがち:
ユーザビリティ向上+アクセシビリティ向上

5.4 制作側の問題

(15) 作者が利用者の視点に立つことが難しい
(16) コストに見合ったメリットが得にくい:
費用・時間 対 アクセス数増加 のバランスが悪い
(17) 作成時のアクセシビリティへの配慮が不足:
  • 作者がエディタで作成:作者に知識・意識が必要,自分でチェック
  • オーサリングツール利用:ツールのアクセシ支援機能が必要
  • サーバサイドで作成:作成ソフトがアクセシブルなコードを出すことが必要
(18) サイト作成時の役割分担不足:
フレームとコンテンツデータの分離:CMS,テンプレート

5.5 その他の問題

(19) 国によるレベルの違い:
  • 言語ごとに音声合成,スクリーンリーダが必要
  • 法令も異なる:米国はリハ法508条,日本はJIS,韓国は単なるガイドライン
  • W3Cのガイドライン策定が欧米中心になりがち
  • インターネットが普及していない国もある

6. 提案

ウェブには5章で述べた様々な問題がある.
では,ガイドラインを活用しながら,利用者の視点に立って,アクセシビリティを向上させるポイントは何か?

6.1 教育

6.2 研究としてのウェブ・アクセシビリティ

ウェブ・アクセシに関連するレイヤー

ウェブ・アクセシビリティに関連するレイヤー
  • 法律,社会,文化
  • 人間:意図形成,行為選択,操作実行,結果知覚,解釈,評価.感情も持つ
  • HCI:AUI,利用者の視点を作者に想像させる工夫
  • UA+コンテンツ:WCAG,UAAG
  • TCP/IP:Semantic Web,Device Independence
ウェブ・アクセシビリティに関連するレイヤー

法律,社会,文化

人間

感情

意図

 

評価

選択

記憶・解釈

操作

知覚・認知

Human-Computer Interaction

ユーザ・エージェント+コンテンツ

TCP/IPプロトコルスイート

6.3 技術の向上と標準への準拠

6.4 戦略

7. まとめ

公開アドレス:http://www.comm.twcu.ac.jp/~nabe/data/200510IC/

最終更新:2005年10月27日 16:18