“Designing Search Engine User Interfaces for the visually impaired”の紹介
2006年7月11日 渡辺隆行 (最終更新:
2006年07月13日 21:46
)
B. Leoporini, etl.al, “Designing Search Engine User Interfaces for the visually impaired”, Web for All 2004.
読み進むにつれて,有用な情報や結果が少なく,当たり前のことしか書いていない論文であることが分かった.(最初はしょぼくても途中から研究成果が提示されるかと思ったが期待はずれ.)
でも,全盲の視覚障害者が検索エンジンを利用する際のアクセシビリティとユーザビリティを取り扱っているので,最後まで読んでまとめた.
概要
情報取得に検索エンジンが重要.全盲の視覚障害者が,スクリーンリーダで検索エンジンを利用する際のデザイン上の問題について述べる.特に,検索エンジンのインターフェースを改善する適切なガイドラインを提案するために,ビジュアルレイアウトと聴覚表示の違いについて議論する.
1. Introduction
著者らの調査[1,2]:ツールと質問紙
- 質問紙調査:ユーザのプロファイル,検索エンジンの一般的知識,検索エンジンのオプション利用,検索エンジン利用の困難さ.
- 対象:晴眼者と視覚障害者.
- 25%は検索エンジンをconfigureしたことがある.75%は少なくとも1回advanced searchをしたことがある.うち38%が全盲の視覚障害者で87%が晴眼者.
??
- 複数のキーワードで検索(92%晴眼者,69%全盲).晴眼者の67%に対し全盲の38%は,検索語の選択に困らない.
- 晴眼者の92%に対し,全盲の視覚障害者の7%が,検索エンジンは使いやすいと答えた.
- 晴眼者は迅速に結果を得て不要な情報を捨てることができた.それに対し全盲の利用者は,シリアルアクセスのために時間がかかった.
- ...(省略)
- 晴眼者の困難は適切な検索語を選ぶこと(62%).それに加えて,全盲の利用者の困難は結果を読むこと(46%,晴眼者の場合は15%).
- 晴眼者の90%が役に立つ結果を得たのにに対し,全盲の38%しか得ていない.
2. 関連研究
- [11,12] UIやウェブページのユーザビリティ・ガイドライン
- [8,9] 視覚障害者用のアクセシビリティとユーザビリティを考慮した基準
- WAIのガイドライン
- 508条
- [13] オンライン・ライブラリのアクセシビリティ
- [6] A.
Ferworn, et.al., "Auditory
WWW Search Tools", ICAD2000. :視覚障害者用の検索専用システムを作ってテストした研究.(特に重要なことは書いてなさげ)
- [4] NOVA Project:視覚障害者の(Digital Libraryの)情報取得時のユーザビリティとアクセシビリティ問題を研究.
- [3] UDの限界を指摘し,テキスト・トランスコーダを提案.
3. 全盲利用者のインターネット・ナビゲーション
全盲者がスクリーンリーダを使ってナビゲーションする際の主な問題点:
- コンテキストの欠如:全体像をつかめない(ブラウジングできない).
- 出力情報のオーバーロード:バナーなどの不要な情報が毎回提示される.(渡辺:回避策有り)
- シーケンシャルアクセス:ページのナビゲーションと読み上げのコマンドは,ユーザにコンテンツへのシーケンシャルアクセスを強要する.(渡辺:最初の問題と同じ問題)
- キーボードナビゲーション:マウスを使ってダイレクトにアクセスすることができない.タブキーなどで順にアクセスするのでナビゲーションに時間がかかる.(渡辺:疑問?)
- スクリーンリーダ:スクリーンリーダによるウェブ利用には熟練が必要.
3.1 検索エンジンのIF
IFはアクセシブルなだけではなくてユーザ・フレンドリーであるべき.ユーザが使うデバイスに依存せず簡単に使えるべき.
ユーザIFは下記のような機能を持っている:
- コンポーネントのアレンジ:重要な要素を目立つ場所に置く.スクロールしなくても良い場所に置く.視覚障害者にとっては,ページトップなど簡単にアクセスできる場所に置くことが重要.
- 表現力:視覚表示の表現力は高い.聴覚においても同じ程度の表示力が必要.
- 要素の数:単純さが大事.
- 機能:ユーザは,一つか2つのキーワードで簡易な検索をして,膨大な数の結果を得てしまう.検索結果の絞り込みや高度な検索を使えるユーザは少ない.
- クラスター化:クラスタリングによって,検索結果をカテゴリー毎にグループ化できるので有用.
下記のような機能は,全盲の利用者とIFのインタラクションを助ける:
- 単純さ:IFはシンプルであるべき.(入力)フィールド,コンボボックス,検索ボタンはページトップに置くべき.広告やリンクや文字を検索テキスト入力フィールドや検索結果の前に置くべきでない.(渡辺:異論有り)
- (入力)フィールドのラベル付け:(入力)フィールドに適切にラベルを付けてスクリーンリーダが読めるようにすることが大事.ラベルはフィールドの左か上に置くべき.ラベルの内容は簡潔でなじみがある言葉を使うべき.
- 迅速なアクセス:アクセスキーやタブインデックスが使えたらナビゲーションや主なフィールドへのアクセスが早くなる.ショートカットと"優先度?"によって,素早くアクスできる.
- ナビゲーションリンク:「次」や「前」に移動するリンクやボタンがキーボードナビゲーションに大事.でも,アクセスキーにアサインしないと使えない.次ページへのリンクはページの最後に置くべし.
- 検索結果のレイアウト:ユーザが素早く簡単に利用できるように,検索結果を適切にレイアウトすることが大事.適切な構造,検索結果の数の通知,次の結果にスキップ,..
4. ビジュアル・レイアウト 対 聴覚知覚
4.1 視覚認知と聴覚認知の比較
- スクリーンリーダがどう読むかを知ることが大切.ここではJAWSを取り上げる.
- JAWSはページの構造(structure)と構成(organization)についてページの情報と提供する.??
- シーケンシャルに読む.
- 行読み,タブで次のリンクにジャンプ.テーブルジャンプ,見出しジャンプ
- 視覚上目立つ場所に表示されていてもHTMLソースの後ろに書かれていたらアクセスしにくい.解決策:CSS positioning,見出しレベル,隠しラベル?,重要度が異なるラベル?
- 書式の問題:フォントスタイル,サイズ,色,などの書式を聴覚表示できない.
- 音声合成の発音とイントネーションの問題.短縮語や外来語を正しく発音できない.
- イベント通知音と警告音を活用すべき.
検索エンジンのUIを設計するときに特に考慮すべきこと:
- 検索ボックス,検索ボタン,コンフィグオプションがすぐに分かること.
- 検索結果が目立っていて利用しやすいこと.
- スポンサーリンクを区別できること.
- キーボードナビゲーションを考慮すること.
4.2 検索エンジンUIの認知例
画面表示がシンプルなGoogleの場合:
- 画面デザイン(図1)はよい.
- スクリーンリーダ表示(図2)では,全てがシリアライズされて長くなる.ナビゲーションバーのリンクが邪魔,検索ボックスにたどり着くまでに他の要素が多い.よって,ナビリンクが問題であると結論.
- 検索結果の画面表示(図3)を見ると,検索結果ごとに"キャシュ"と"似た結果"へのリンクが繰り返し表示されているのが分かる.順番に言うと,リンクになっている検索結果の簡易サマリー,???.重要でないタブのtaborderを下げるべき.
- 検索結果のスクリーンリーダ表示(図4).
- 検索結果を示す文を見出し要素にして素早くアクセスできるようにする.
- スポンサーリンクのHTMLソース上の位置を検索結果より後ろにする.
- 検索結果のリンクに高いtabindexの優先度を付ける.
- 次のページへのリンクを検索結果の後ろに持ってきてアクセスキーを付与する.
- 前ページと次ページへのリンクを追加する.
レイアウトが複雑なYahooの場合:
- 画面表示でさえわかりにくい.
- トップページに283のリンクがある.
- 検索結果のページレイアウトはシンプルだが,20個も結果が表示されているしGoogle同様の2ndaryリンクが各結果にある.
5. 検索エンジンUIのガイドライン案
UIデザインの主な問題点:
- ページがシリアライズされた後の読み上げ順が大事.
- Tabキーやコマンドによるによるナビゲーションに対応したHTMLを書く.
- 視覚表示で示されている情報が聴覚表示でも示されること.
本論文の提案:
- 編集フィールドと検索オプションの場所がすぐに分かるように配置・ラベリングされていること.
- 検索結果のハイライト.
- 検索結果のアレンジ.
- スポンサーが提供しているリンクを区別できること.
- ナビゲーションリンクとヘルプリンクの追加.
- 迅速なナビゲーション.
- 音による警告.
- aural CSS.
6. 結論